熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
オフィスを出たのは、午後七時過ぎだった。
いつもに比べたら少し早めの時間。
私が住むアパートメントまで、オフィスからはほんの十分ほどの距離だ。


いつもは脇目も振らずに帰路を急ぐばかりだけど、今日は華やかなクリスマスイルミネーションを、ちょっとゆっくり眺めながら歩く。
通りを行き交う陽気なアメリカ人のカップルが羨ましくて、立ち止まって振り返ったりもしてしまった。


もしも私が今、日本にいたなら。
仕事中に感じた寂しさを、今もまだ引き摺っている。
日本とは違う広い空を見上げながら、私は優月を想った。


今までの二十五年間がなんだったんだろうと思うくらい、私は今、彼の手や温もりを欲して、恋しいと思っている。
こうやって、同じ時間を過ごしていない相手を想って逢いたいと思うのも、私が恋をしているから。
そう思ったら恥ずかしくて嬉しくて、一人ぼっちはちょっと切ない。


今までは、望まなくても側にいた人。
彼への恋心をはっきりと自覚した途端、離れ離れになってしまった。
始まったばかりの恋の熱情に、水を差された、そんな感じ。


「クリスマスイブ……かあ」


無意識に呟いたその言葉が、思いの外私の胸に浸透していく。
そう、イブ。『前夜』――。
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