熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月はそう言って、今度は大きな溜め息をついた。
そして、ボソッと呟く。


「そうと決まったら、今夜は抱けない」

「っ、……ええっ!?」


信じられない一言に、私はひっくり返った声で聞き返した。


「抱かない。これ以上は、無理」


本当に本気で言っているのか、優月は私に背を向けたまま、つれない言葉を繰り返す。


「そんな。……酷いっ!!」


私は半泣きになって優月の背をバシッと叩いた。
私の襲撃を丸腰状態で受けた優月が、「うっ」と短い唸り声をあげる。


「こ、こんな恥ずかしい格好させて。優月だって確かに欲情した顔してたくせに!」

「っ……おいこら、綾乃、やめろって」

「『獣の顔』して散々ドキドキさせた挙句、中途半端に放置して『無理』って何!?」


あんまりだ、こんなの!とばかりに、私は優月の背中をポカポカと叩く。


「綾乃、やーめーろ。……だ~……やめろって言ってんだろうが!」


優月は私を宥めるように言っていたけれど、やまない攻撃に痺れを切らしたかのように、クルリと寝返りを打って向き合うと、私の両手首をグッと掴み取った。
そして、泣きべその私の顔を見ると、肩を落として目を伏せる。


「泣くようなことかよ」

「だって」

「じゃあ、帰ってくる?」

「無理」

「……だろ?」


私の即答を聞いて、優月は困ったように苦笑を漏らした。
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