月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】


……そう言われると弱い俺だ。


涙雨のことは気になるし、縁にもまた逢いたい。
 

……………。


「百合姫が縁に逢いたがってたから、今度連れて行く」
 

……何故正直に俺も縁や涙雨に逢いたいと言えない。


俺はどっかで性格をひねってしまったらしい。


いつも斜めの方向の言葉しか言えない。


「それで、依頼を請けたのは天龍にいる頃なのか?」
 

黒は幼い頃は都内にある、影小路別邸にいた。


紅緒様がそこを拠点に活動されていたからだ。


眠られた紅緒様のお身体は天龍にある本邸にかくまわれたが、黒はそのまま別邸で過ごしていた。


だから、俺と百合姫も黒とは幼馴染という感じになっている。
 

そんな黒が天龍――つまり本家に引っ込んだのは、跡目争いで色々あったからだ。
 

最強と言われる黒を担ごうとする連中と、黒に流れる鬼の血を危険視して今の当主の続投を望む連中との、水面下の攻防だ。

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