月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「うーん……天音は白の母君も同じだから、どうにか認めてもらいたいなあ」
「何を認められるんだ、阿呆」
こいつのこういう軽口はいつものことだとわかっていても、いちいちつっかかってしまう。
誤解を招きしかしないから。
――黒が、堂の扉に手を触れる。
途端、まだ扉も開いていない堂から風が巻き起こって、あっという間に俺たちを包んだ。
空いている手で目の辺りをかばって、薄目で状況を把握する。
風は俺たちを取り巻いて、すぐに消えた。
消えたとき俺たちが立っていたのは、月の光も届かない山の中だった。
「ん。予定通り。お迎えも来てるな」
黒が呟くと――俺の手を離さないままだったので、こちらから腕を引いて離させた――、がさりと樹が揺れる音がして、いくつかの影が闇の中に現れた。