月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】


そう言ったのは、和服姿に般若(はんにゃ)の面をした――青年、だった。


闇の中だから、衣の色は昏い色にしか見えない。


『御門の主』と呼ばれて、右手に組んでいた印は解かないままにする。
 

それを察してか、鬼の面の男は右手を胸の辺りで振った。


「そう警戒されるな。小路の若君に無理を言ってしまったこと、すまなかった。俺は冬芽。一応、ここの総領(そうりょう)だ」
 

声は、かなり若く聞こえる。
 

人間とは寿命の違うのが妖異だから、青年に見える鬼の年齢は、俺たちにとっての寿命をとうにこえていることが普通だ。
 

……けど、妖異が簡単に名前を明かすって、黒はこいつ――冬芽とどんだけ信頼関係築いているんだ?
 

名前は魂の縛りだ。


術師は、名前一つで相手を殺すことも出来る。


まあ、現代にいたるまでに、親がつけた世間を生きるための名前と、生まれながらにその魂が持っている真の名前――真名(まな)とが分かれて存在しているのだが。

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