月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
総領屋敷の玄関に集まっていた鬼たちに、冬芽はそう忠告した。
すると、一人の少女――年齢は俺たちより遙かに上だろうが、見た目は小学生か中学生といったところだ――が出て来て、目を潤ませた。
今まで見た中に、般若の面をしているのは冬芽しかいない。
少女は、長い黒髪の背の真ん中あたりで結わえていて、前髪と頬にかかる髪は切り揃えられている。
雪のように白い肌。人間の姿をとっていられるのならば、ある程度の妖力はあるのだろう。
「小路様、御門様、どうぞ、兄様をお助けください」
兄様……冬芽の妹か、血縁か。
「……桃子に逢ってみねばなんとも言えなくてすまないが、必ずしも貴殿らの望む解決を、とは約せないことは承知しておいてほしい。人の世と、鬼の世と、霊の世は必ずしも重ならない」
俺の冷たい反応に、少女は少し肩を落とした。
だが、鬼を相手に『絶対に助ける』と約束することは避けた方がいいことだ。
妖異の中でも高位の存在である鬼。
もし違(たが)えられたと知られれば、報復を受ける可能性は高く、またその力も甘く見ると危険だからだ。