月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
この術では、対象が忘れている――記憶から消していたり、思い出したくがないために忘れたと思っている記憶まで呼び覚ます。
俺が対象の記憶を『見る』だけでなく、対象に『思い出させる』ため、危険性も伴う。
人は、死んでしまいたいほどの記憶も抱えて生きているから。
桃子に記憶を呼び覚ませても問題がないかの判断は、術を行使する俺がするしかない。
歓迎されていないことは承知で、鬼の屋敷を進む。
「白、俺は一度逢っているから、今日はやめておく」
「そうなのか?」
俺を桃子に集中させるためだろうか、黒は部屋の前でそう言った。
冬芽が襖(ふすま)をあける。
中にいたのは、泣きぬれ、黒髪の美しい女性だった。