月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
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「気が進まない、ってカオだな」
冬芽との対面、桃子との対面を終え、一度俺たちは御門別邸へ戻った。
私室の文机(ふづくえ)に向かっていると、縁側で片足を伸ばして座る無炎が様子を見て来た。
「まあ……見ての通りだ。あの状態で、術式をかけるのは危険だ」
対面した桃子は、顔全部で泣いているのかと思うほど、後から後から涙がこぼれてきていた。
俺の問いかけには声で返事はしないまでも肯くし、ときたま俺の顔を見て来ることもあった。
自我はしっかりとあるようだが、不安定としか言えない。
「お前が桃子の記憶に潜り込むことは出来ないのか? 桃子に気取られないように」
無炎が片方立てた膝に頬杖をついて室内を見て来る。
「無理だな。不可能ではないが、桃子に気取られないように、というのが難しい。いっそ自我もないくらい落ちているのなら無理にでも介入するが、意識ははっきりしている。俺が桃子の記憶に潜り込めば、桃子はそれに気づくだろう」
「桃子に自我あることで、むしろ出来ないことか……」
無炎もため息をつく。