樫の木の恋(中)
「大殿は…お主を愛してる。」
「は?」
予想だにしなかった言葉に秀吉殿は思わず声が出ていた。
「わしは当初、秀吉と大殿の関係は遊び程度のものだと思っていた。お主は優秀だし、美人じゃから大殿は気に入って手を出しただけだと思っていた。」
「……。」
「しかしお主の話をした後の大殿は切なげだった。見間違いなどではない。あの天下人や第六天魔王と呼ばれるあの織田信長公が、一人の女子に切なげな顔をしておったのだぞ?」
秀吉殿は表情一つ変えず、目を伏せたまま。柴田殿はそんな秀吉殿に訴えかけるように話を続ける。
「なぁ、秀吉。お主は大殿を捨てたのか?何故、大殿はお主をそんなにも…愛している?」
柴田殿は大殿のことを心配していた。
悪い女にたぶらかされたのではと思っているのだろう。