樫の木の恋(中)



「殿。三成です。」

「おお、入れ入れ。」

夜、秀吉は髪を緩く束ね、机に向かっていた。振り向きながら三成を見る秀吉に、三成は思わず赤面した。


以前三成は秀吉と半兵衛を仲違いさせることに成功した。大殿のせいで上手くいかなかったが。

しかしその時の秀吉よりも明らかに色っぽくなっていた。

「ん?どうした?」

止まっていた足を動かし、秀吉に近づく三成。
すぐ目の前に座った三成はきょろきょろと周りを見渡した。

「てっきり竹中殿に止められると思ったのですが。」

「ああ…。半兵衛は今、悲しみの真っ只中と言ったところかな。」

「今回の事でですか?」

「んにゃ、理想と現実の違いにと言ったところか。」

三成は秀吉が何を言いたいのか分からなかった。
そんな三成に秀吉は近づき、顔に手を当てる。

「三成は…どう思う?己の女が、他の男を籠絡しようとしていたりしたら。」

「嫌です、かね。少なくともそれがしは殿の事が好きなので、殿にそのような事はしてほしくありませんが。」

「…そっか。悪い、変な話をしたな。」

そう言って笑う秀吉に、三成は首を傾げた。

「殿…。それがしは殿を騙した際、竹中殿に女がいると言いましたよね?そしてそれに対して悲しそうにしていたではありませんか。」

「ん?ああ。まぁな。でも、どちらかと言うより、言葉の方が効いたかな。抱けないという言葉の方が悲しかった。まぁお主のでっち上げだったがな。」



< 207 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop