樫の木の恋(中)
「殿。三成です。」
「おお、入れ入れ。」
夜、秀吉は髪を緩く束ね、机に向かっていた。振り向きながら三成を見る秀吉に、三成は思わず赤面した。
以前三成は秀吉と半兵衛を仲違いさせることに成功した。大殿のせいで上手くいかなかったが。
しかしその時の秀吉よりも明らかに色っぽくなっていた。
「ん?どうした?」
止まっていた足を動かし、秀吉に近づく三成。
すぐ目の前に座った三成はきょろきょろと周りを見渡した。
「てっきり竹中殿に止められると思ったのですが。」
「ああ…。半兵衛は今、悲しみの真っ只中と言ったところかな。」
「今回の事でですか?」
「んにゃ、理想と現実の違いにと言ったところか。」
三成は秀吉が何を言いたいのか分からなかった。
そんな三成に秀吉は近づき、顔に手を当てる。
「三成は…どう思う?己の女が、他の男を籠絡しようとしていたりしたら。」
「嫌です、かね。少なくともそれがしは殿の事が好きなので、殿にそのような事はしてほしくありませんが。」
「…そっか。悪い、変な話をしたな。」
そう言って笑う秀吉に、三成は首を傾げた。
「殿…。それがしは殿を騙した際、竹中殿に女がいると言いましたよね?そしてそれに対して悲しそうにしていたではありませんか。」
「ん?ああ。まぁな。でも、どちらかと言うより、言葉の方が効いたかな。抱けないという言葉の方が悲しかった。まぁお主のでっち上げだったがな。」