樫の木の恋(中)
「…………三成。」
秀吉殿の部屋から出てきた所なのだろう、三成が廊下を歩いていた。月明かりの無い今日の夜。
蝋燭の灯りだけが、頼りだった。
己も同じようなものか。いや、蝋燭すら無いのかもしれない。
「……おや、竹中殿。殿が心配で?」
「………まぁ、な。」
三成は小さく笑い、こちらを面白そうに見てくる。しかしいつもそのように見てくるのに、今日は何故だか寂しそうに見えた。
「殿、可愛らしいですから、それがしも我慢が効きませんで。」
「……っ!したのか?」
にやにやとする三成を胸ぐらを掴みたい気分だったが、懸命にそれを耐える。
「なんとまぁ無粋な問いを…。そんなこと言えるわけないではありませぬか。」
三成の顔を見ていたら分からなかった。どう…なのだろうか。
いやでも、三成は嘘をすぐにつく。
していないと考えるのが妥当なのだろうか。
「……殿が、竹中殿が嫉妬をすると嘆いておられましたよ?束縛するのだと。」
「……。」
「竹中殿も他の女子でも抱いてみたら良いのでは?別に今まで女の経験が殿しかないという訳でも無いのでしょう?他の女子でも抱けば、殿をそこまで束縛しなくなるのでは?」
「……黙れ。」
「…竹中殿は殿の事となると怖いですなぁ。」
そう言いながら三成は去っていった。
秀吉殿の部屋に行くべきか悩んでいた。
行ったところで何を話せばいいと言うのだ。
結局何を話したらいいか分からず己の部屋へと足を向けた。