樫の木の恋(中)
「のぉ、半兵衛!結婚したいと思わんか?」
翌日、それがしは暗い雰囲気でいたのに、それに相反して楽しそうに秀吉殿が飯の際声をあげ突拍子もないことをいう。
「…はい?」
「じゃから結婚じゃよ。したくないんか?」
何を言っているのだろうか。昨日の今日でいきなり結婚の話になるものなのか?
昨日あれだけ悲しみを受けたのに、急に結婚?
もう秀吉殿が何を考えているか分からなかった。
「そ…りゃしたいと思った事はありますが……。秀吉殿と結婚したらそれがしは足枷になって」
「誰がわしと結婚と言ったんじゃ?」
「は?すみませぬ、ちょっと意味が…」
「じゃから!わしは結婚などせんよ?半兵衛に女子をつけて結婚させようと思っておるんじゃよ。」
そんな無邪気に笑ったところで意味がわからない。
ぐるぐると訳が分からなくて回る頭。いや、理解しろという方がおかしい。
「……それがしは秀吉殿以外の女子などいりません。」
「じゃあ誰が竹中の姓を継ぐ?お主で途絶えさせるのか?お主のような優秀な軍師が子一人作らないと言うのか?」
それは、考えたことが無い訳ではない。
だが秀吉殿とはそれが出来ないのなら、諦めるしかないのだろうと、途絶えさせてしまうしかないのだろうと思っていた。
「わしは子は産まんぞ。そんなことをしている暇がない。」
「では、羽柴の姓が失われるのでは?誰が秀吉殿の後を継ぐのです?」
「元々わしは農民の出じゃ、元々武家の家と違って、そこまで血に拘りは無い。大殿の子でも養子にして継がせればええだけの話じゃ。」
確かに大殿はたくさんの側室がいて、子も多い。
よくある手ではあるし、実際秀吉殿はそうするのだろう。大殿も喜ばれるだろうし。