樫の木の恋(中)
「それがしは秀吉殿以外の女子を抱く気になどなれませぬ。血が途絶えてしまうのなら、それは仕方の無い事。父上には顔向け出来ませぬが、秀吉殿を好きになった時からそのような事は諦めておりましたから。」
「だーめーじゃ!父上に顔向け出来んのじゃろう?そりゃいかん!名軍師の血は絶やしてはならん。これは半兵衛のわがままで決めていいことではない!」
何故それほどまでに…。
それがしは今それどころではないのに。秀吉殿の事で手が一杯だというのに。
いや、もしかしたら立場を同じにしようとしているのか?
それがしが妻を作ったら、秀吉殿が他の男をたぶらかそうとも手を出そうとも文句は言えぬようにしようとしているのか?
そんな邪な考えが頭を支配していく。
いや、さすがにそこまでは…。
そう思いたいのに、秀吉殿のように頭の切れる方は何を考えているか分からない。
「わしと別れたくないのならそれでも構わん。わしを正室だと思って、側室という考え方で嫁を貰おうぞ。」
「断ります。」
「なら、わしと別れるか。わしのせいでお主の血を絶やしたとあっては寝覚めが悪いからな。」
「……っ!別れませぬ…。……………秀吉殿と別れたくはありませぬ…。」
「なら、決まりじゃな。これも武家の習いじゃ。仕方のないことだ。」
そう言って飯を食べ終えた秀吉殿は部屋から出ていった。