樫の木の恋(中)
秀吉殿に嫁を作れと言われてから半月経った。
最近前より忙しくて、ここ半月まともに秀吉殿と会話などしていなかった。
やはり嫁などいらないし、秀吉殿さえいれば入ればいいというのに、それを伝える暇がない。
そもそも秀吉殿はあまりそれがしをお供として連れていかなくなった。
それがしだけの秀吉殿でいて欲しいと願ってしまった事が、秀吉殿にとって面倒になったのだろう。
どこで…歯車が狂ってしまったのだろうか…。
こんなはずではなかったのに。
「竹中殿、殿がお呼びです。」
昨夜秀吉殿は帰ってきたのだと、さっき知った。
安土城にて政務があったのだと、それで何日も開けていたのだと、清正に聞いて初めて知った。
別に仲が悪い訳ではない。話すときは秀吉殿は明るいし、いつも通りだ。
だが、秀吉殿が必要以上にそれがしに話さなくなったのも事実。共にいる時間も減った。
「おお、半兵衛。城下町の事、お主に任せてばかりで悪いな。」
襖を開けると、秀吉殿の笑顔と明るい声が出迎えてくれる。
「いえ…、して何用で?」
「いやぁ、お主の嫁を連れてきたんじゃよ。」
「は?」
秀吉殿の目の前に、秀吉殿よりも幾分若い女子が可愛らしい着物を身に纏い、可愛らしい顔をした女子がいた。
しかし寸分も心が揺れない。
「安藤殿の娘でな。安藤殿に訳を話したら喜んで娘を送り出してくれた。」