樫の木の恋(中)


「秀吉殿!それがしは、秀吉殿しか」

「あーもう黙れ黙れ。うるさいわ。珠殿の立場も考えい。そんな怖い顔をするから怯えておるではないか。」

珠と呼ばれたその女子は不安気にこちらを見上げてくる。
その顔から目をそらし、秀吉殿に座れと言われたのでどかっと不満を漏らすかのように座った。

「半兵衛はいい男じゃろう?知っておるじゃろうが、齊藤家にいたころ十面埋伏術とか考えて、織田家を撃退したり、17人であの岐阜城を取ったり。織田家に来てからも数々の戦いでな先陣切るわ、武功あげまくるわ。さすが織田家きっての軍師。これで顔もいいんじゃから言うこと無いよなぁ。」

無邪気に笑いながら、それがしを持ち上げる。
女子がちらっとこちらを向くのが分かり、そちらを向くと頬を赤らめたのが分かった。

「よ、良いのですか?その…竹中殿と羽柴殿は…男女の関係なのだと…。」

「あー良い良い!わしゃ、子はいらんからな!半兵衛の子を産んでやってくれぃ。」

「ですから…!」

「……半兵衛、黙っておれと言ったろ?」

秀吉殿の殺気が身を包む。ぴりぴりと肌に感じるそれは金縛りのように体の自由を奪う。

「珠殿、まぁ側室という扱いじゃし、今は忙しいから祝言を挙げてやることは出来んが、まぁ今日から半兵衛の事を頼むの。」

丁度秀吉殿が言い終わる頃、小姓が秀吉殿に用件を告げ、秀吉殿は去っていった。



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