守神様の想い人
次の日も、いつものように畑仕事をして、食事をして………、また、その次の日も………。

そして、だんだん冬の気配が濃くなってきた。

リジュアたちの家は順調で、もう少しで完成だ。

「ねぇ、お母さん。サァラ大丈夫かしら?最近あまり笑わなくなったし、食事だって………。」

食事の用意をしているミアの背中にリジュアが話しかけた。

「お母さん、何か知らないの?」

お皿を並べるミアにリジュアが尋ねる。

不意にミアがリジュアに視線を向け、真剣な顔で言った。

「リジュア、ちょっとガイルに頼みたいことがあるんだけど。」

「えっ?」

ミアがリジュアに頼んだのは、ガイルに守神様の森に連れていって欲しいということだった。

「私一人では、とてもたどり着けないと思う。ガイル、すまないけど、一緒に行ってくれないかい?無理なことを頼んでいるのは承知の上だよ。」

ガイルは腕を組んで考えている。

「お母さん、無茶よ。もう山の方は雪が降り始めてるわ。それに、今年は山が荒れて危ないって、みんな言ってたじゃない。」

「だけど、あんなサァラを見てるだけなんて………。それに、あの調子じゃ春まで待ってたら………。」

ミアは厳しい表情になってうつむく。

「わかった。」

黙って聞いていたガイルが言った。

「行こう。」

「ガイル!!」

「リジュアだって、サァラが心配だろう?あんなサァラをほっとけるのか?」

「そりゃあ………、でも、」

リジュアは少し考えてから、

「お母さん、私が行くわ。サァラがこうなった理由を知ってるんでしょう?教えて。」

「リジュア、森は危ないのよ。」

「その森に行こうとしてるの、お母さんでしょ?お母さんより私の方が若いし体力もあるわ。」

リジュアの申し出に強く反対していたミアだったが、リジュアの固い意思に根負けして受け入れざるを得なくなった。

「じゃあ、ガイルと私が守神様の所へ行くのはオッケーね。で、どうしてサァラがあんな風になってしまったのか………、お母さん、説明してくれる?」

ミアはしぶしぶといった様子でうなづいた。

「たぶん、サァラがああなったのは………、守神様のことが原因じゃないかと思うんだよ。私たちが森に送られた日のことから話そうかね。守神様はそれはそれはお美しくて、お優しいお方でね。怖がる私たちに親切に接してくださったんだよ………………。」

ミアはサァラが贄として守神様に会った日のことから話しだした。

そして、守神様が二人を村まで送り届けてくれたところまでを話し終えたとき、リジュアが不思議そうに尋ねた。

「うん………と、じゃあ、サァラは守神様に一目惚れしたってことかしら?」

「帰ってきてから様子が変だったから尋ねたんだよ。そうしたら、黙って涙をながしてね………。でも、その時は自分の気持ちにハッキリと気づいてなかったのかもしれないね………、まだ。」

リジュアは納得のいかない顔で首をかしげている。

「サァラったら、他の男には全く興味がなかったのよ。そんなサァラが一目惚れなんてするかしら?どんなに守神様がお綺麗だからといって………………。」

ガイルも黙って聞いているが、意見は同じのようだ。

「それはわからないけど………………。」

ミアもそこまでは考えていなかったようで、考え込んでしまった。

そこで、ガイルが尋ねた。

「あの書き置きして居なくなった日は、守神様のところへ行ってたのか?」

ハッとしてミアが話し出す。

「そうなんだよ。守神様に会いに、あの森に行こうとしてたのは間違いないと思うんだよ。でも、お会いできたのかも分からないし、その時以来、サァラは守神様のことを忘れてしまったみたいなんだ。あの日、どこに行ったのかも、覚えていないみたいだった。」

ガイルとリジュアが顔を見合わせる。

「サァラが無事に帰ってきたってことは、守神様が帰してくれたと思っていいんじゃないかしら。問題はサァラの記憶が消えてることね………、守神様が何かなさったのかしら?」

三人はそれぞれ考え込んだ。

「サァラが守神様に恋をしていたとして、記憶を消すほどのことが必要とは思えないよ。」

ガイルが顔をしかめながら言った。

「そうよね。私もそう思う。」

リジュアもしかめっ面をして言う。

「ここで、なんだかんだ言っててもはじまらないね。サァラの状態を話して、お力になっていただけないか頼んでくれないかい?もし、守神様がサァラになにかされたのだとしたら、何かお考えがあってのことかもしれないけれど………。」

「よし、明後日あたり天候が回復するはずだ。明日中に支度をしておこう。行こうリジュア、守神様に会いに。」

二人は顔を見合わせてうなづきあった。
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