守神様の想い人
守神様はサァラの側まで来ると、サァラを後ろから包み込むように抱きしめた。

とたんにサァラの目からは涙がポロポロとこぼれ落ちる。

「サァラ。ごめん。」

守神様が高い背を丸めながら、サァラの髪に頬を寄せ謝ると、サァラは首を横に振った。

「謝らないでください。全部、私自身のせいなんですから………。」

止まることのない涙をポロポロこぼしながら、サァラが話し出した。

「私………、守神様が………………、」

サァラはそこまで言うと、守神様の腕の中で向きをかえ、守神様と向き合い、それから、決心したように、守神様と視線を合わせた。

目からは涙を流しながら………。

「守神様が好きです。今も………、きっと………、今までも。

それに………………、

守神様も私のことを同じように好いてくださってると………、思ってしまってました。」

そこまで話して苦しそうに目を臥せた。

「サァラ、私は………、」

言いかける守神様に、首を横に振ってみせたサァラは話を続けた。

「今までごめんなさい。もう、我が儘は言いません。………だから、最後のお願いをきいてください。このまま、………守神様を好きな気持ちだけは消さないでください。お願いです。」

そう言って、両手で顔を覆って泣いた。

「サァラ………。私はなんて酷なことを君にしてしまったんだろう。君はこんなに私を愛してくれていたのに………。」

守神様はそう言ってサァラを強く抱きしめた。

どのくらい、そうしていたのか、守神様は片手でサァラを抱き、片手をサァラの頬にあて顔をあげさせると、じっとサァラの瞳を見つめた。

サァラは不安そうな顔をしながら、まだ泣いている。

『サァラ………、これから話すことは私の本心だ。いいかい?』

サァラは覚悟を決めたように一度目をつむりうなづく。

『サァラ、私はサァラを………………、愛してる。初めてサァラと出逢い、共に過ごしたときから。

ここで、一緒に過ごしたのはサァラだけだよ。

贄として、ここに来た娘は他にもいた。でも、サァラ以外、ここに住まわしたくなくて………、そういうときは贄と村人の記憶を消して忘れさせた。もちろん雨は降らせてね。

私は、サァラが贄としてここへ来てくれるのをずっと心待ちにしていた。

そして、サァラは来てくれた。

待ってたぶん会えたときは嬉しくて………。

人は体を持っている間は魂の記憶を思い出せないから、当然サァラは私のことを忘れてしまってるんだけど、会うたびに違うサァラも楽しみの一つだったよ。』

守神様はサァラを見つめながらニコリと微笑んだ。

『でも、本当はサァラをずっと側に置いておきたくて、しょうがなかったんだ………。

そうするのは簡単だったんだけど………、私には覚悟と自信がなくて………。』

そう言うと何かに耐えるような表情でサァラを見つめる守神様に、サァラも目を反らせなくなった。

『サァラ………。君を私の妻にすることは、君にとって幸せなことばかりじゃないかもしれない………、だけど、私がどんなときにもずっと側にいて支えるから、一緒にいてくれないかな?………………サァラを愛してる、もう離れたくないんだ。』

それを聞いたサァラの目からはとめどなく涙が溢れて守神様はそれをぬぐってくれた。

そして、サァラは守神様を見つめながら、ゆっくりとうなづいて………、

「私の方こそ………、守神様を困らせることがあるかもしれませんが、ずっとお側にいさせてもらえますか?」

そう言って、泣きながら微笑んだ。

守神様は一瞬驚いた顔をしてから、すぐに花がほころぶように微笑むと、両手でサァラを抱きしめ、サァラも守神様の背に手をまわし、しっかり抱きしめた。

『ありがとう………、サァラ。愛してる。これからもずっと………。』

「私も………、愛してます。」

涙を流しながら頬笑むサァラの頬を指のはらでぬぐいながら、守神様の顔がそっと近づいてきた。

サァラは胸が苦しくなるのを感じながら目を閉じた。

守神様の熱のこもった吐息が唇にかかる距離まで近づいた………と思った………その時。

『あっ!忘れてた!』

急に守神様がサァラから体を離した。

ビックリして目を開いたサァラを見ながら、守神様は大きく息をついた。

『大事なサァラを妻にするのに、みんなのお許しをもらわないとね!』

ニッコリ微笑んで、守神様はサァラの手を引いて、もと居た部屋への扉を開いた。
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