守神様の想い人
結婚の儀式当日………。
「おはよう。お母さん、サァラ。」
「おはよう、リジュア。」
ニッコリ笑うミアはいつも通りの朝食を用意していた。
「三人で食べる朝御飯も最後だねぇ。」
少しだけ寂しそうな顔になって話すミアに、リジュアとサァラも少ししんみりとなった。
雰囲気を変えるようにリジュアが話し出す。
「守神様、寂しがってるだろうね?」
「うーん。そうかなぁ?ふふっ。」
そんなことを言いながら嬉しそうに笑い合う。
「でも、今日の儀式………、上手くいくのかしら?」
心配気なサァラに、ミアが優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。ガイルと守神様にお任せしてれば。」
三人はそんなことを話しながら、いつも通り楽しく朝の食事をすませた。
その頃、ガイルの家ではガイルの父親がガイルと、夜明けとともに来た守神様に特訓を受けていた。
「ほら、言ってみて。」
「ア、ア、アミ………、、、」
ガイルの父親は暑くもない室内で額に汗をにじませている。
ここ何日かの守神様の訪問で母親はもうかなり守神様になじみ、朝からも、ちゃんと母親らしく挨拶をした。
「やだわ、お父さんたら………。」
苦笑いしている母親の方を見ながら、父親は泣きそうな顔をしている。
『ガイルがリジュアと夫婦になれば、リジュアの妹のサァラと結婚する私はガイルの弟、つまりは息子になるんだから………、気を使わないで、ね、父君。』
守神様がニッコリ微笑みながら、そう言うと、父親は真っ青になって気を失った。
「お、親父?!」
『あれ?変なこと言っちゃったかな?』
父親をささえながら苦笑いするガイルと目を合わせて守神様は困った顔をした。
そんなこんなで、日没。
守神様とガイルは花嫁を迎えに行く時を待っていた。
村の結婚の儀式は日が沈んだら長老がまず花婿の家に行き、そこから連れだって花嫁の家に花嫁を迎えに行く。
それから、皆が待つ洞へ行き、長老から結婚の許可を宣言されて、晴れて夫婦になるのだ。
洞とは村の外れにある大きな洞窟なのだが、夏も冬も快適で、村の集会場になっていた。
そこで、皆で夜更けまでお祝いの宴を開くのが習わしとなっていた。
扉をノックする音が響き、ガイルの母親が開けると、長老と数人の村人が立っていた。
「おおっ、さぁ、行くか。花嫁を迎えになぁ。」
皆で花嫁の家に向かう道すがら、長老が感嘆しながら話しだす。
「いや~、しかし、驚くこともあるもんだなぁ。あのアミルが!守神様に庇護されて、こんなに立派に成長しておったとは!
しかも、贄として送られたサァラと恋仲になるとはなぁ………、これも、運命だのぉ。」
アミルとは、もちろん守神様のことなのだが、小さいときに森に迷いこみ行方知れずになっていたガイルの弟のアミルが、守神様のところで成長して、出会ったサァラと恋仲になり、迎えに来たのだ………、と、皆に説明したのだ。
もちろん、そう思いこます為にすこし守神様のお力も使ったのだけれど………。
「本当に………。私たちも嬉しいやら驚くやら!ねぇ、あなた?」
急にふられたガイルの父親はハッとした様子でただただうなづいてみせた。
「うん、うん、無理はないのぉ………。いなくなったとき、あんなに悲しんでおったのが、無事に大きくなって、しかも花嫁まで貰うともなると………。しかも、ガイルもだ。何重にも嬉しいのぉ。」
長老が嬉しそうに、そんなことを言った。
守神様を息子として振る舞うように練習させられた父親だったが、どうにもぎこちなさが取れなくて、結局、アミルが帰ってきたのが嬉しすぎて、感動で心が落ち着かない状態だと話しておいたのだ。
そんなことを話すうちに、花嫁であるリジュアとサァラの家の前へと着いた。
守神様は浮き立つ気持ちを隠しきれないように目を輝かせていた。
「うむ。では………。」
長老がノックすると、短い返事がして、ミアが扉を開けた。
「じゃあ、ガイルからだ。」
長老がそう言うと、ガイルがミアに挨拶をして中に入った。
「リジュア………。」
いつになく真剣な表情で手を差し出すガイルに少し照れ笑いしながらリジュアが手を伸ばした。
「ガイル………。」
ミアに二人で会釈をして、ガイルがリジュアの手を引く形でドアを出ていく。
「よし、アミル。」
守神様はうなづいて、ドアをくぐり、そして、優しく微笑みながらミアに挨拶をした。
ミアのすぐ傍らにはサァラが少し緊張した様子で立っている。
『サァラ………。』
サァラを抱きすくめたい気持ちをぐっと抑え、サァラに手を差し出すと、サァラも恥ずかしそうに微笑みながら、守神様の手をとった。
守神様とサァラも出て、ミアも出てきた。
「よ~し、じゃあ、行こうかの?」
皆がうなづくと、長老を先頭に洞へと向かった。
洞へと向かう道中、長老が守神様に尋ねた。
「アミルとサァラは守神様のところで暮らすのか?」
『はい、いろいろ守神様のお手伝いもありますので。』
「ほぉ。守神様のお手伝いとは大変そうじゃのぉ。」
『いや、そうでもないですよ。』
「そうか………、まぁ、守神様によろしくなぁ。今夜もご出席いただきたいところじゃったのだが、残念じゃったなぁ………。して、アミル?」
『はい。』
「守神様とは………、どのようなお方なのじゃろう?やはり、わしらとはお姿も違うんじゃろうなぁ?」
守神様がフッと笑いながら答える。
『みんなと………、変わりないです。』
それには、今夜はさすがに神妙な面持ちだった四人も吹き出さずにはおれなかった。
「なんじゃ、ガイル?お前もお会いしたことがあるのか?」
不思議そうにガイルを見る長老は少し笑っている。
「ええ、弟がお世話になった上に、妻になるリジュアの妹、サァラもこれからお世話になりますので………。」
「そうか。で、ガイルから見て、どうだったんじゃ?アミルは幼き頃より守神様を見ておるから、わしらとは見方が違うかもしれん。」
「みんなと………、変わりないです。」
ガイルがニヤニヤしながら言うと、リジュアやサァラ、ミアも………、守神様も笑った。
それを見た長老も安心したように笑う。
「お前たちの様子からして、守神様はお優しいお方のようじゃのう。わしらが………、いや、わしが、勝手に恐ろしいお方だと勘違いしていたのだなぁ………。森の恵みを与えて下さる守神様に申し訳ないことを………、有難いことじゃ。感謝せねばのぉ。」
そう言って、うん、うんと何度も何度もうなづいた。
サァラが守神様を見ると、守神様もうん、うんとうなづいて嬉しそうな顔をしていた。
「おはよう。お母さん、サァラ。」
「おはよう、リジュア。」
ニッコリ笑うミアはいつも通りの朝食を用意していた。
「三人で食べる朝御飯も最後だねぇ。」
少しだけ寂しそうな顔になって話すミアに、リジュアとサァラも少ししんみりとなった。
雰囲気を変えるようにリジュアが話し出す。
「守神様、寂しがってるだろうね?」
「うーん。そうかなぁ?ふふっ。」
そんなことを言いながら嬉しそうに笑い合う。
「でも、今日の儀式………、上手くいくのかしら?」
心配気なサァラに、ミアが優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。ガイルと守神様にお任せしてれば。」
三人はそんなことを話しながら、いつも通り楽しく朝の食事をすませた。
その頃、ガイルの家ではガイルの父親がガイルと、夜明けとともに来た守神様に特訓を受けていた。
「ほら、言ってみて。」
「ア、ア、アミ………、、、」
ガイルの父親は暑くもない室内で額に汗をにじませている。
ここ何日かの守神様の訪問で母親はもうかなり守神様になじみ、朝からも、ちゃんと母親らしく挨拶をした。
「やだわ、お父さんたら………。」
苦笑いしている母親の方を見ながら、父親は泣きそうな顔をしている。
『ガイルがリジュアと夫婦になれば、リジュアの妹のサァラと結婚する私はガイルの弟、つまりは息子になるんだから………、気を使わないで、ね、父君。』
守神様がニッコリ微笑みながら、そう言うと、父親は真っ青になって気を失った。
「お、親父?!」
『あれ?変なこと言っちゃったかな?』
父親をささえながら苦笑いするガイルと目を合わせて守神様は困った顔をした。
そんなこんなで、日没。
守神様とガイルは花嫁を迎えに行く時を待っていた。
村の結婚の儀式は日が沈んだら長老がまず花婿の家に行き、そこから連れだって花嫁の家に花嫁を迎えに行く。
それから、皆が待つ洞へ行き、長老から結婚の許可を宣言されて、晴れて夫婦になるのだ。
洞とは村の外れにある大きな洞窟なのだが、夏も冬も快適で、村の集会場になっていた。
そこで、皆で夜更けまでお祝いの宴を開くのが習わしとなっていた。
扉をノックする音が響き、ガイルの母親が開けると、長老と数人の村人が立っていた。
「おおっ、さぁ、行くか。花嫁を迎えになぁ。」
皆で花嫁の家に向かう道すがら、長老が感嘆しながら話しだす。
「いや~、しかし、驚くこともあるもんだなぁ。あのアミルが!守神様に庇護されて、こんなに立派に成長しておったとは!
しかも、贄として送られたサァラと恋仲になるとはなぁ………、これも、運命だのぉ。」
アミルとは、もちろん守神様のことなのだが、小さいときに森に迷いこみ行方知れずになっていたガイルの弟のアミルが、守神様のところで成長して、出会ったサァラと恋仲になり、迎えに来たのだ………、と、皆に説明したのだ。
もちろん、そう思いこます為にすこし守神様のお力も使ったのだけれど………。
「本当に………。私たちも嬉しいやら驚くやら!ねぇ、あなた?」
急にふられたガイルの父親はハッとした様子でただただうなづいてみせた。
「うん、うん、無理はないのぉ………。いなくなったとき、あんなに悲しんでおったのが、無事に大きくなって、しかも花嫁まで貰うともなると………。しかも、ガイルもだ。何重にも嬉しいのぉ。」
長老が嬉しそうに、そんなことを言った。
守神様を息子として振る舞うように練習させられた父親だったが、どうにもぎこちなさが取れなくて、結局、アミルが帰ってきたのが嬉しすぎて、感動で心が落ち着かない状態だと話しておいたのだ。
そんなことを話すうちに、花嫁であるリジュアとサァラの家の前へと着いた。
守神様は浮き立つ気持ちを隠しきれないように目を輝かせていた。
「うむ。では………。」
長老がノックすると、短い返事がして、ミアが扉を開けた。
「じゃあ、ガイルからだ。」
長老がそう言うと、ガイルがミアに挨拶をして中に入った。
「リジュア………。」
いつになく真剣な表情で手を差し出すガイルに少し照れ笑いしながらリジュアが手を伸ばした。
「ガイル………。」
ミアに二人で会釈をして、ガイルがリジュアの手を引く形でドアを出ていく。
「よし、アミル。」
守神様はうなづいて、ドアをくぐり、そして、優しく微笑みながらミアに挨拶をした。
ミアのすぐ傍らにはサァラが少し緊張した様子で立っている。
『サァラ………。』
サァラを抱きすくめたい気持ちをぐっと抑え、サァラに手を差し出すと、サァラも恥ずかしそうに微笑みながら、守神様の手をとった。
守神様とサァラも出て、ミアも出てきた。
「よ~し、じゃあ、行こうかの?」
皆がうなづくと、長老を先頭に洞へと向かった。
洞へと向かう道中、長老が守神様に尋ねた。
「アミルとサァラは守神様のところで暮らすのか?」
『はい、いろいろ守神様のお手伝いもありますので。』
「ほぉ。守神様のお手伝いとは大変そうじゃのぉ。」
『いや、そうでもないですよ。』
「そうか………、まぁ、守神様によろしくなぁ。今夜もご出席いただきたいところじゃったのだが、残念じゃったなぁ………。して、アミル?」
『はい。』
「守神様とは………、どのようなお方なのじゃろう?やはり、わしらとはお姿も違うんじゃろうなぁ?」
守神様がフッと笑いながら答える。
『みんなと………、変わりないです。』
それには、今夜はさすがに神妙な面持ちだった四人も吹き出さずにはおれなかった。
「なんじゃ、ガイル?お前もお会いしたことがあるのか?」
不思議そうにガイルを見る長老は少し笑っている。
「ええ、弟がお世話になった上に、妻になるリジュアの妹、サァラもこれからお世話になりますので………。」
「そうか。で、ガイルから見て、どうだったんじゃ?アミルは幼き頃より守神様を見ておるから、わしらとは見方が違うかもしれん。」
「みんなと………、変わりないです。」
ガイルがニヤニヤしながら言うと、リジュアやサァラ、ミアも………、守神様も笑った。
それを見た長老も安心したように笑う。
「お前たちの様子からして、守神様はお優しいお方のようじゃのう。わしらが………、いや、わしが、勝手に恐ろしいお方だと勘違いしていたのだなぁ………。森の恵みを与えて下さる守神様に申し訳ないことを………、有難いことじゃ。感謝せねばのぉ。」
そう言って、うん、うんと何度も何度もうなづいた。
サァラが守神様を見ると、守神様もうん、うんとうなづいて嬉しそうな顔をしていた。