エキストラヒロイン
【作戦 その3】
色仕掛けでどきっとさせよう。
長い髪をポニーテールに結ってうなじを意識させ、胸元を大胆に開けて、うるつやリップを塗る。
「なんかいつもより気合入ってる?」
さすが文香。
すぐに変化がわかったようだ。
「まあね!」
「いいじゃん!ポニテ似合うね!」
「そ、そう?」
予想以上にべた褒めされて、本気で照れるあたしに文香は笑いながら太鼓判を押してくれた。
よく考えれみれば、日替わりで色んな髪型に変えるよりも、ポニテをあたしのトレードークとして掲げれば、来栖くんの印象にも強く残るかもしれない。
明日からポニテしよう。
「来栖く」
「昨日のドラマ見た!?」
「くず」
「そういえば新しい映画がね!」
「く」
「キャーッ!!」
仕掛けたい人が女子に埋もれているせいで、色気うんぬんどころの問題じゃない。
「公ちゃぁあん…」
「どうしたどうした」
「惚れ薬開発したいと思わない?」
「思わないわね」
「彼氏持ちが!リア充爆ぜろ!」
この間も雨の日に仲良くラブラブに相合傘して帰りやがって、こっちはぼろいビニール傘が壊れないかひやひやしながら帰ったんだからな!
「そういえば、耀のポニーテール見るの初めてかも。可愛いね」
作戦は遂行できなかったけれど、この日からあたしのトレードマークはポニーテールとなった。