エキストラヒロイン
【作戦 その5】
こうなったらヤケクソだ。
「………耀、何書いてるの?」
「来栖くんへのラブレター」
昨日買ってきた可愛いレターセットに、唸りながら文字を書く。
「それって普通は家とか、人に見られないような場所で書くものじゃないの?誰かに見られたらどうするの?」
「もうあたしが来栖王子の親衛隊だってことはクラスのみんな知ってるし、今更恥ずかしがってもしょうがないもん」
「それでもこんなとこで書かなくても…」
「ある一瞬にしか思い浮かばない文章もあるの!こういうのってフィーリングなんだよ!歴史を築きあげてきた詩人も俳人もそうやって素晴らしいものを生んできたんだから!」
「そ、そう…」
短すぎても気持ちが伝わらないし、あまり長すぎるラブレターも読みづらいだろうし、ちょうどいい文字数で心にちゅどーんと響く文面にしないと。
授業中も先生に見つからないように教科書を盾にして、ひたすらあたしの恋心を綴った。
これが最後の作戦。
身を引いてもだめ、曲がり角の運命的な出会いも失敗、色仕掛けもできない、ライバルも蹴落とせない。
だったらもう告白するしかないでしょ!
手紙で!