朝はココアを、夜にはミルクティーを

「あぁ、もしかして白石さん、俺が言ったやつやってくれてました?」

亘理さんはフッと微笑み、テーブルの周りに雑に置いていたファイルを拾い上げる。その様子を横目でちらっと見た私はというと、彼を睨むくらいしか抵抗の術はない。

「だってやんなきゃダメなんですよね?」

「まあ、はい」

「一応、簡単に一覧でここ三年の部門別の売上と損失は出せるようにして、それから廃棄処分したものと、伸び率の傾向はだいたい出しました」

「仕事が早いですね」

しゃがみこんで、パソコンを操作して画面を確認しながら彼はどこか楽しそうに目を細める。
自分の家なのに、職場にいる気分になってしまうのがこの同居のダメなところかもしれない。
しかも、今までやってきたものとは百八十度違う事務仕事だ。

三年振りにちゃんとパソコンを使うので、作業にもたついてしまうのは仕方ない。昔ならもっとサクサクできたはずなのに。

私が簡単にまとめた集計を眺めて、亘理さんは唸るようにつぶやく。

「やっぱりなあ。お惣菜が極端に売れてないですよね。それは俺が来た時から思ってたことですが。見た目からして買いたいとは思えない」

「ラインナップに限界がありますよ、今の人数だと」

私も彼の隣に腰かけ、一緒になって画面をのぞき込む。

「でも三年前から大して売れてませんよ」

「お惣菜はあくまで本社と相談して種類や品数を調整してます。そっちの問題でしょ?前の店長の指示でやってるんですもん、こっちは」

「俺は二ヶ月前に転職してきたので、前の体制のことはよく分かりません」

「え、そうなんですか?知りませんでした!前はどこにいたんですか?」

「ブラックマーケットカンパニーです」

「─────え?」


一瞬、彼の言葉がうまく飲み込めなくて聞き返すのに時間がかかった。

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