朝はココアを、夜にはミルクティーを
二人でベランダで並びながらお互いの洗濯物をハンガーラックにかける間、他愛のない会話をする。
「今日は、ついにお店のトイレがリフォームされます」
「……あれ?今日でしたっけ?」
「はい。今日から三日ほどで終わるそうですよ」
彼がうなずいて、パンと真っ白なタオルを広げるのを眺めながら私はそうかぁと唸る。
「あの古びたトイレともおさらばですね」
「大熊さんたちの意見を参考にして、最低限の設備は整えました。バリアフリー対応で、オムツ交換台も設置しましたし、授乳室もひとつ」
無駄のない動きで次々に洗濯物を干していく彼の姿は、まるで仕事をしているみたいだった。
こうやってどうすればロスがないか考えながらサクサクと物事を進めていく能力に長けているのだろう。洗濯物を干す動作ひとつひとつで彼のことが分かる。
お店のことも、誰かがこうした方がいいんじゃないか、ああした方が良くなると言えば、すぐさま検討して実行する。
お店のトイレのリフォームも、低予算ながらも本社にきちんと打診してこんなに早く実現したのだから驚きだ。
バサバサとバスタオルを振ってシワを伸ばしながら洗濯バサミで留めていると、ふと左腕にゾワッとする感覚を覚えた。
「……きゃあ!わ、亘理さん!!取って!」
思わず左手をブンブン振り回しても、くっついたそれがなぜか取れない。
すぐ隣の亘理さんに助けを求めると、彼はおかしそうに吹き出していた。
「トンボじゃないですか。触れないんですか?」
「早く!早くぅぅぅ!!取ってぇぇ!!」
この時期に大量に飛び回るヤツらは、私を悩ませる。
小さい虫なら平気だが、大きいのは全般ダメなのでこうやって大騒ぎしてしまう。
そっとトンボを指でつまんだ彼は、優しくベランダの外へ逃がしていた。