記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「えっ! ここって動物園!」
驚きに目を見張っていると、先に車を降りた朔が助手席に回ってドアを開けてくれる。
「そうだよ。さあ、行こうか」
朔に促されて車から降りると、動物園らしく園内への入口にはライオンやキリンの大きな置物がある。
ワクワクが止まらない雪乃は、お知らせの看板の横にセットされている園内の案内を手に取り開くと動物の紹介を読む。
ここには関東では珍しく、オオカミが飼育されている。
来たい来たいと思っていたが、一人では来づらいし、都会を通っての長距離の運転をしたいとも思わず、なかなか行動に移せなかった場所だ。
オオカミの展示をしている場所を探し、朔に報告しようと振り返ると、彼は微笑んでチケットを差し出してきた。
「ありがとう。代金は?」
「いらないよ。それよりも、はやく入ろう」
戸惑っている間に空いている手を取られて、入口へと引っ張られていき、係員にチケットをもぎられている間だけ手が離れた。
入口を通過すると、朔は手を差し出してくる。
彼の楽しそうな雰囲気に水を差したくなくて、雪乃は素直にその手を取った。