記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「あれ? もういいの?」
「うん。ネコ科も好きだけど、本命はオオカミだもん」
そこからは流れるように象やムフロン、フラミンゴ、チンパンジー、ゴリラと数々の雪乃にとっては興味の欠片もない動物を流し見て行き、途中の休憩スペースで少しの休憩を挟んでまた園内を周りはじめる。
最後は一番の楽しみであるオオカミだが、その前にワイルドドッグであるリカオンへのルートを歩いていく。
「ところで、なんでそんなにオオカミにハマった訳?」
「うーん……ジェイクにイエローストーンに連れていってもらった時に見たのが印象的だったからかな。美しい被毛と瞳。群れの関係と役割。強い絆と社会性が魅力的だった」
「絆?」
「そう。生涯、一匹の伴侶と群れを率いていくんだよ? それに、妊娠中や怪我をしたり、老いていたりする仲間にも食事を運んで分け与える。群れのメンバーが、産まれた子供たちの子守をしたりするし。あとは見た目かな。青々とした森を背景にしてたり、雪の中で佇む姿が美しいの。私の家に行ったら朔は驚くかもね。写真やら置物やら、とにかく色んなオオカミグッズがあるから」
そうこう話している間に、リカオンの展示スペースにたどり着いた。
中からは独特の鳴き声がしていて、ふさふさとした白いシッポを揺らしている。
大きな耳と黒っぽい顔。まだら模様の被毛を持ち、体が小さめで可愛らしい。
「この子たちは、ヒョウを追い返すことも出来るし、獲物を代わる代わる追いかけることができるんだから、凄いと思わない?」
「へえー、こんな小さな体でなんて凄いな」
朔は感心したように覗き込み笑った。
その声と重なるように、甲高いリカオンの鳴き声が重なる。
「なんか、目とかもつぶらで可愛いな」
「オオカミとは違う魅力があるでしょ? じゃあ、そろそろ本命に会いに行かないと……」
次に進もうとすると、リカオンを見ている間は離されていた手を取られ、ギュッと握られた。