記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
そんな訳で、何を持って行ったらいいのか卓馬に相談をしたら、彼が自分の役目と一緒に頼んでくれることになっている。
リビングに戻って、からし色のモッズコートに袖を通してるところで、玄関チャイムが鳴らされた。
スマートフォンと財布、鍵をコートのポケットに突っ込むと、雪乃は玄関で急いでエンジニアブーツに足を突っ込むと扉を開けた。
「もう出られるか?」
「うん、大丈夫。迎えに来てくれて、ありがとう」
扉を施錠して、卓馬についていくと駐車場に彼の愛車が停まっていた。
「迎えに来る前に、オードブルとチーズの盛り合わせは店で受け取っておいた。準備組が来て、オレが店を出る頃にはほとんど集まっていたな」
「へー、じゃあ急がないとね」
先を歩く卓馬は、助手席のドアを開けて待っている。
このことに関して雪乃は必要ないと言いつづけているが、卓馬は『女性と一緒の時のマナーだろ』と言って譲らない。
十回は同じやり取りを繰り返し、仕方がなく雪乃は受け入れるようになった。
座席に座ってドアが閉められると、美味しそうな匂いに包み込まれる。
チキンとポテトの嗅ぎ慣れた香りに思わず、うっとりとしてしまう。
「いつもの店でも買ったの?」
卓馬が運転席に座って、シートベルトをつけるのを待ってから口にすると、彼は差も当然のように言った。
「お前は、あそこの店のが好きだろ? 大丈夫だよ。その分はオレが出した」
彼が言う〈あそこの店〉というのは、チェーン店のチキン専門店である。
毎年のようにクリスマスには、色々な店がチキンを全面に押しだし、さながらチキン戦争状態になるが雪乃はぶれることなく同じ店で予約をする。
子供の頃から親しみのある味や匂いは、どこかほっとするものがあるからかもしれない。