記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
電車で揺られている間も、雪乃の頭の中には裏切られた思いしかなかった。普段なら気になる人の多い電車ないも気にならないほどショックな出来事だった。
そして、もう一度信じた自分に嫌気がさす。
そもそも、同窓会に参加すべきではなかったのだ。
毎年、ハガキやメールがくる度に、不参加にしていたのに参加した途端にこれだ。
雪乃は決断を下した。
もう、必要がない限り都会には来るまいとーー。
最寄り駅のアナウンスが流れ、人の間をぬってホームに降り立ち迷わず階段を上り改札を出ると、急いでマンションへと入った。
卓馬と鉢合わせたら、間違いなく理由を訪ねられるだろうし、説得されるだろう。
それだけは避けたかった。
エレベーターに乗って上を目指す間も、こんなにもどかしかったことはない。
今回ばかりはエレベーター内の音楽にすら苛立ってくる。
ようやく到着して扉が開くと、足早にカードキーをかざし鍵を開け、自分の部屋へと直行する。
ボストンバックを掴んで持ち込んだ数少ない衣類を詰め込み、ノートパソコンと先日購入した本も一緒にしてチャックを閉め、その鞄を玄関に置いてからリビングに寄ってメモ帳に軽く卓馬に向けて当たり障りのない、仕事に戻るというメッセージを残した。
きっと、ぶつぶつ文句を言うだろう。
メッセージを見た後には、メールや電話がくるのは分かりきっている雪乃は、スマートフォンの電源を落としてからボストンバックを手に玄関から出た。