記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!



 目指すのは、愛車の置いてある実家だ。
 卓馬のマンションから電車で二十分くらいの場所にある。
 北海道から帰って来た両親とは、一度電話で話したが旅行がトラブルも含めて楽しかったものであるのが伺えた。

 そんな二人とは、実家に車を停めにいって以来、顔を合わせていないがコテージに行けば二人の気配の名残を感じられるため寂しくはない。
 いつでも父が車が動かなくならないようにメンテナンスしてくれて、母はコテージに食料を足しに行ってくれる。
 と言っても、実は雪乃の車を動かす名目で食料を足しに行きつつ、コテージのある森の中を満喫しにいっているのだ。
 両親も彼女同様に、都会よりも自然溢れる場所を好んでいる。

 足早に駅の改札を通ってホームに下りた雪乃は、タイミングよく止まっていた電車に乗ると、空いている席に座って目を閉じた。
 周りの景色や音を遮断して、人が多いことへの嫌悪感をやり過ごすこと数十分ーー。
 駅にたどり着く頃には、動悸と息苦しさを感じはじめていて、電車を降りてから深呼吸を繰り返した。

 家にたどり着くまでーー。
 そう自分に言い聞かせながら、重いボストンバックを肩にかけて歩く。
 両親は、駅から徒歩数分にある住宅街に妹夫婦と住んでいる。
 子供の苦手な雪乃は、甥っ子が産まれたばかりの頃に会って以来だが、時にはプレゼントを送るくらいはしていた。
 今はより会いたくないと思っている雪乃は、真っすぐ駐車場に向かって予備の鍵で車を開けると、ボストンバックを後部座席に放り込んでエンジンをかけた。
 全てを振り切るようにアクセルを踏み、三時間ほどの旅路に向かって走り出した。



< 131 / 176 >

この作品をシェア

pagetop