記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
人によっては、そこまでして手に入れるよりも、確実に手に入るであろうところに目を向けるべきだと思うだろう。
けれど、朔には雪乃以外には、隙間だらけの心を満たすことはできないのだ。
彼女の実家近くのコインパーキングに車を停めてから、覚えているままに歩いて行き、追い返されるのを覚悟してインターフォンを鳴らした。
応答が聞こえるまでの時間は、拷問にも等しい。
緊張で冬だというのに嫌な汗が流れていき、もう一度押そうとボタンに指を当てると、玄関の扉が開いた。
「は~い、どちら様ですか?」
変わっていない雪乃の母親ーー朝比奈恵理子の声に、懐かしさで胸が締め付けられた。
「恵理子さん、俺です……大上朔です」
朔の姿を目で捉えた恵理子は、柔らかく目を細めた。
「あらあら、朔くん……大きくなって、というか相変わらずハンサムね」
昔から、朔は恵理子に気にいられていた。初めて会った時から、あなたみたいな息子が欲しかったと可愛がられ、まるで本当の息子のように愛し、時には叱ってくれたものだ。
「あの……ヒナは? いえ、ヒナのコテージの場所を教えてくれませんか?」
「まあまあ、ちょっと落ち着いて。とりあえず、中へどうぞ」
今すぐ教えて欲しいという気持ちをどうにか押さえ付けて、朔は促されるまま思い出の詰まった家の中へと入った。
そこで、玄関に若い女性の靴と男物の革靴があることに気がついた。