記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「雪乃さんは、諦めた恋愛の続きをする為よって。普通の人間同士の恋愛を選ばなかったのは、ばれた時に恥ずかしいからだって笑ってました」
「正解よ、朱音ちゃん。朔くんが、雪乃の思い人」
恵理子は楽しそうに笑いながら立ち上がり、電話の置いてある棚に行くと何かを紙に書いている。
はやく雪乃の無事を確かめたい朔は、そわそわと落ち着かない気分でいると、向かい側から無視できない視線を感じた。
その視線を受け止めるべく顔を向ければ、和人と目が合った。
「あなたが雪乃さんの思い人だとしても関係ありません。あの人を傷つけたことには変わりはないでしょ? そんな人に、近づいて欲しくない」
「これは、俺とヒナの問題だ。君こそ間に入らないでくれないか」
「正直に言っておきます。僕は雪乃さんに好意を抱いています。だから、泣かせるようなことは許せない」
強い眼差しに、自分もこれだけの強さがあれば、最初の時に傷つけずにすんだのかもしれないと思え、古い心の傷が痛んだ。
あの頃の自分は、手紙の返事が来なくても、読んでくれていればいいと思って電話はしなかった。
言葉よりも、形あるものの方が伝わると思っていたのが災いした。
ぎゅっと、膝の上に置いた手を握り締めていると、目の前に箱が置かれた。見覚えのない箱に首を傾げれば、恵理子は申し訳なさそうな顔を朔に向けた。