記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!




「どうして、この場所が分かったの?」

「恵理子さんに聞きに行った。開けてくれないか? 話がしたい」

「私には特に話したいことはないんだけど」

「頼むよ、ヒナ。それに、恵理子さんが食材とかの補充を忘れてたって預かってきたんだ」

「補充されてない? 嘘……ちょっと待ってて!」

 画面から離れて冷蔵庫を開けてみれば、中は空っぽのままだった。あるといえば調味料だけだ。
 パントリーも覗いてみたが、長持ちするようなレトルトや非常食などはないままで、ほとんど空に近い。
 朔が言っていることがほんとであるのを確認した雪乃は、テレビインターフォンのところまで戻って大きなため息を吐いた。どうやら、彼を招き入れるしかないようだ。

「門は開けたままでいいから、玄関の前まで車で入って」

「分かった。ありがとう、ヒナ」

 終了ボタンを押して、玄関のところまで行くと、ほどなくして車の低いエンジン音が聞こえてきた。
 迎えるために扉を開ければ、朔はトランクから荷物を出しているところだった。
 肉や魚、乳製品が入っているでろう保冷バッグを肩に掛け、ペットボトルの入った段ボールを小脇に抱え、トランクを閉めると玄関を開けて佇む雪乃に向かってにっこりと微笑んだ。

「扉を開けておいてくれてありがとう」

「入って」

 彼の態度にどう返したら分からない雪乃は、そうぶっきらぼうに返すしかできなかった。
 扉を押さえている彼女の横を通って朔が入ると、扉を閉め鍵を掛けて中へと案内する。




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