記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「ペットボトルをちょうだい。パントリーにしまってくるから」
「いや、生鮮食品を頼むよ。場所を教えてくれれば、俺が運んでおく」
「あ、ありがとう。パントリーはそこの扉よ」
保冷バッグを受け取り、パントリーの場所を指差すと、朔はさっさと置きにいった。
その背を見送り、保冷バッグに入っている肉と魚をチルド室に、季節の野菜を野菜室に、牛乳とバターをサイドポケットに入れ、最後に保冷剤を冷凍庫に入れて体を起こすと、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「ヒナ……心配した。俺、なにかした?」
背中に感じる朔の熱に、胸の奥がずしりと重くなった。
彼は本気で言っているのだろうか?
何かをしたとするなら、雪乃に対してだけじゃない。
あの美しい婚約者に対しても裏切りを働いている。
「離して……自分の立場を分かってる? 今、こうしている間にも悲しんでいる女の人がいるんじゃない?」
雪乃はそんな言葉を言いたくなかった。そして、自分のせいで誰かが悲しんでいるなんてことも嫌だった。
略奪愛も不倫も、雪乃がもっとも嫌悪しているものだ。