記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「塩顔っていうのかな。それプラス人前に立つのも苦手で、印象に残らないんだよ。だから、俺があの会社の顔みたいになちゃったんだ……困ったことにね。だから、間違って玲奈は俺の婚約者みたいな噂が回ったんだろうな」
眉を寄せて困った顔をする朔には、嘘を言っているような様子はない。
どうすればいいのか分からず俯いて、自分の足とその両側にある彼の靴に視線を落とした。
「ちゃんと、今度紹介する。だから、機嫌を直してくれないか?」
俯いたままの雪乃の髪に軽い感触が伝わってきて、遅れてそれが朔の唇だと気づいた。
彼は宥めすかそうとしているのだ。
そんなことに気づくと共に顔を上げれば、ぎゅっと抱きしめられて、肩に顔を埋められた。
勝手な勘違いで、朔を傷つけたのだろうかと真剣に焦っていると、髪に触れる吐息と振動に笑いの気配を捉えて、信じられない思いだった。
「ちょっと! 何が可笑しいのよ。人が真面目に」
「違うよ、ヒナ。可笑しいんじゃなくて、嬉しいんだよ。ニヤニヤが止まらなくて、顔を見られたくない」
「い、意味が分からないんだけど」
「だってさ……それって、嫉妬したってことだろ? つまりは、嫉妬するほど好きになってくれたってことじゃないか」
雪乃の顔は一気に赤くなった。