記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!






 胃の辺りに感じる苦い痛みを無視して突っ切ると、今度は店の裏口を開けた。


「サンキュ」


 引くタイプの扉を手で押さえて、雪乃は先に卓馬を行かせた。

 後ろに続いた彼女だったが、突然立ち止まられてその大きな背中に顔をぶつけるはめになった。


「ちょっと……」


 文句を言ってやろうと鼻を押さえながら顔を上げると、肩越しに振り返る卓馬と目が合う。

 全てを見透かしているような視線に、雪乃はたじろいだ。


「勝手に抜け出すなよ? オレの車で帰るのは決定事項だからな」


 もう終わったと思っていた車中での会話の続きに、雪乃はたじろいだ。


「か、香穂と帰るからいいよ」


「女二人で帰ったら危ないだろ。綾瀬も送ってやるよ」


 そう言いながら、すでに盛り上がり始めている中へ歩き出した卓馬の背中を追った。


「もしかしたら、香穂がコーヒー飲みながら話したいって言うかもしれないじゃん」


「そしたら寄ってやる」 


「そうじゃなくて……女子トークをしたかったら」


「離れた席に座ってやるよ」


 こうなった卓馬は、絶対に譲りはしないのは経験済みの雪乃は、ぐったりとうなだれながら会場に足を踏み入れた。



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