記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
いつもより明るめに思える店内を見回せば、すでに他の人が持ってきたアルコールと食べ物で盛り上がっている。壁にあるデジタル時計は、開始時間を五分過ぎていることを知らせていた。
「おーい、卓馬! 何やってたんだよ。遅かったな」
「鞍山くん! こっちこっち」
あちらこちらから上がる卓馬を呼ぶ声に、学生時代を雪乃は思い出した。顔もよく、背も高く、落ち着いた性格でトラブルを解決する頼もしさのあった彼は、男女問わずクラスの人気者だった。
こっそりと卓馬の後ろから離れた雪乃は、ドリンク置場でリンゴジュースを紙コップにそそぎ入れた。今日は、アルコールを口にする気はない。もしかしたら、二度と外でアルコールは口にしないかもしれない。
あんな経験は一度だけで十分だ。
「ゆーきの!」
かけられた言葉と同時に背中に衝撃を感じて、持っていた紙コップの中身が波打った。
こんなことをするのは一人しかおらず、苛立ちや怒りよりも、雪乃の口元には自然と笑みが浮かんでいた。
「香穂。久しぶり」
紙コップをテーブルに置いて、ぎゅっと回されている腕を数回ぽんぽんと軽く叩くと少しだけ体を動かしやすくなった。生まれた空間を利用して、体を反転させると思っていたとおりの人物が満面の笑みを浮かべていた。