記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「久しぶり、雪乃。会いたかった! 飛行機代がもっと安ければ、もう少し帰って来れるのに」
「大変なのは、飛行機代だけじゃないでしょ。飛行機に乗ってる時間が大変じゃない?」
雪乃にとって綾瀬香穂は唯一の親友である。
大学時代に留学したアメリカで出会い、六年前にそのカナダ人ーーエイデンと結婚してカナダに移住したため、雪乃が会うのは結婚式以来だ。
あの日のことは今でも鮮明に思い出せる。建物の中ではなく大自然の中、少人数だけを招いた手作りの結婚式はリラックス出来る温かさがあった。結婚式に憧れのない雪乃でさえ感動したほどに。
その後、一年がたった頃に妊娠して、元気な女の子を出産して子育てに追われていた。
「うーん、たしかに長いよね。あと時差がきつい」
「あーあ、そうだろね。そういえば、ソフィアちゃんは元気?」
「うん。元気、元気。パワフルって感じかな」
「寂しがってんじゃないの?」
「うーん、そうでもないんじゃないかな。あたしがいない間は、エイデンの両親が泊まってくれることになってるから、甘やかしてもらえて喜んでんじゃないかな?」
くすくすと笑う香穂は、雪乃の目から見てかなり幸せそうに見えた。実感として、結婚も子供もイメージが出来ないが、会場内を見渡すと、中には子供を連れて来ている人もいる。
その顔には、やはり香穂と同じような表情が浮かんでいて、周りに集まる人たちも楽しそうにしていた。
子供が苦手な雪乃は、どうしても顔が引き攣ってしまう。