記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!





「ヒナ、大丈夫か?」

 扉を叩かれて、ショーツを身につけていた手が止まる。そんなに長く入っていただろうかと不思議に思いながらも、どうにか手を動かしてパーカーを被り、ジーンズを引き上げた。

「だ、大丈夫だよ」

「そう? ならいいけど」

 随分と心配性だなと思いながら、ドライヤーで髪を乾かし洗濯カゴにタオルを投げ込みキッチンへと行くと、香ばしいパンと食欲をそそるベーコンの匂いに迎えられた。
 まさに爽やかな朝という光景に、自然と雪乃の口元がカーブした。

「料理……出来たんだ」

「一応、簡単なものならね。まあ、今回のは料理とは言えないけど。さあ、座って」

 促されるまま椅子に座り、テーブルに並べられている食べ物に空腹が刺激された。
 皿にはスクランブルエッグ、カリカリベーコン、ハッシュドポテト、新鮮そうなサラダが盛りつけられていて、中央のカゴには数種類のパンが入っている。
 まるで、ペンションの朝食のようだ。
 
「紅茶でよかった?」

「あ、うん。ありがとう」

 注がれたばかりの紅茶のマグカップを受け取り、まず最初に口をつけた。
 起きた時から、喉が痛い気がして適切な温度で入れられた紅茶は喉を潤すのにありがたかった。




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