記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
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ぐにゃりと力の抜けた体が傾ぎ、卓馬は雪乃を受け止めた。
「朔? 雪に……何かしたのか?」
「雪乃!? って、なんであんたがいるのよ!」
異変に気づいた香穂が、人混みを掻き分けて側までくると朔に目を留めて憤った。
予想外の人間の登場に、卓馬の中にある雪乃相手にだけ発揮される守ってやりたいという気持ちが、全面に押し出された。
青ざめて動けないでいる朔に、攻撃的な苛立ちが渦巻く。
彼を囲む女たちの存在に、まるで高校時代に戻ったような錯覚さえ覚える。あの頃も、こうして雪乃は傷ついた。
「出席者の中に、お前の名前はなかったと思ってたがな。帰国は一週間後じゃなかったか?」
「僕が……声をかけたんです」
手を上げたのは、向島だった。
「ドイツで雑誌の撮影をしている時に会って、同窓会があることを教えたんですよ」
「チッ……余計なことを」
「朝日奈さんと朔は、親しい友人同士ですよね?」
「他人が勝手に思い描いている関係が、永遠に通じる真実だと思うなよ」
雪乃を抱き上げた卓馬は、真っ正面から向島を睨みつけた。