記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!





「朔……勝手にいなくなったお前を、雪が笑顔で迎えてくれるとでも思ってたのか?」


「……卓馬、俺は」


 言いよどむ朔に苛立った様子で背を向けた卓馬は、雪乃を抱え直すと歩き出した。


「ここは勝手に使ってくれ。鍵は綾瀬に渡してくれればいいから」


 最も信頼できる香穂の名前を出した卓馬は、朔について来るように頭を傾けた。

 雪乃が認めたくなくとも、長い付き合いだっただけに、仕草で読み取りついて来た。もちろん、香穂も。

 厨房を抜けて、扉を開くと庭に出て立ち止まった卓馬が振り返ると、今にも泣き出しそうな顔で近づいてくる。


「朔……雪に近づくなとは言わない。けどな、傷つけることだけは許さない。中途半端な気持ちなら、雪との再会は無かったことにして過ごせ」


 雪乃注意を向けている朔が聞いているのか気になりはしたが、強張った肩と顎を見ればきちんと理解しているのだと分かる。


「再会をなかったことには出来ない。俺が何年……この日を夢見ていたか、卓馬には分からないよ」


「ああ、わかんねえよ。わかりたくもねえけどな。まあ、本気なんだったら、何もいわねえよ。雪を傷つけないなら邪魔しない」


 卓馬の胸に顔を埋める雪乃の顔が見えるように、髪を耳にかけるために伸ばした朔の手は、傍から見ても分かるほど震えている。


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