記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
じっと音御立てずにいると、シャワーの音が耳に届いた。
いないと思っていた相手は、どうやらまだいたという事実に雪乃は勢いよく体を起こすと、ベッドの下に散らばっている下着を身につけて、ジーンズを引き上げた。
「ちょっと……Tシャツはどこ?」
探していると、代わりにライダースジャケットと鞄が窓辺のテーブルに置いてあるのを見つけた。
速く逃げたくてしょうがないが、鞄の中を漁って財布からあるだけのお札をテーブルに置いて備付けのメモにペンを走らせる。
『少ないでしょうが、ホテル代の足しにしてください』
これでよし!
そう思って振り返ると、反対側のベッドの足元にTシャツを見つけてほっと胸を撫で下ろした。
これで帰れる。
素早く忘れ物はないか確認して、この部屋から去るべくブーツに足を突っ込むと、まだ水音のする浴室の扉の前を通りすぎてドアノブを掴んだところでーー。