記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
ここまでの不運があるだろうか。
それとも、早い厄年でもきたか。
そう思いたいぐらい、一昨日から運気に見放されている。
「ヒナ……どうしてここに?」
目の前で紙袋を手に立っていたのは、見間違えようもない朔だった。
「ここって、卓馬の家じゃ」
相手が驚いているのと同じくらい、雪乃も驚いている。声も出ないほどに。
じっと見つめることしか出来ないでいると、後ろから声がかけられ雪乃は肩を揺らした。
「雪? どうかしたのか……って、朔?」
心配そうに雪乃の腰に手を沿えた卓馬は、昨夜以上に驚いた声を上げた。
そんな二人の様子を気にすることなく、朔は微笑んだ。
「向かいの部屋に住むことになったから、挨拶をしとこうと思って」
「お前……知ってて越してきたのか?」
「まさか。卓馬、教えてくれなかったじゃないか。偶然だよ。会社に近いマンションがここしか無かったってだけの」
冷ややかな目になった朔に、雪乃は自分が知っている昔の彼を探そうとした。
でも、見た目、表情、言葉使い、どれを見てもかつての朔はどこにもいない気がしてくる。
これは、もはや知らない人だ。