記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「ところで、聞いてもいいかな?」
にっこりと微笑んでーー見えるが、雪乃には目が笑っていないように感じる嘘の笑み浮かべた。
「なんだよ」
「どうして雪乃が、卓馬の家にいるの?」
「あっ? 泊まってったからに決まってるだろ」
「ふーん……雪乃って、簡単に独身男の家に泊まるんだ?」
どこか軽蔑を込めた言い方に、雪乃は朔を睨みつけた。
「何? 文句ある? 卓馬は友達であり、家族なのよ? その辺の下心しかない男たちと一緒にしないで」
朔に向かって一歩踏みだそうとしたら、後ろから腕を回されて引き戻された。
「やめとけ、雪。こんな所で立ち話もなんだから、入れよ」
ぴりぴりしたムードを打ち破ったのは、静かな卓馬の声だった。
だが、その本人は先に廊下を歩きながら、時計を気にしている。後ろからついて来る朔を気にしないように、雪乃は卓馬へと意識を集中させた。
「何かあったの?」
「ああ。ホテルで、じいさんが話があるんだと。ちっ、めんどくせぇ」
そう言いながらも、卓馬は自室に入ってウォークインクローゼットからスーツを出しはじめた。