記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!






 彼の祖父は大手ホテルの経営者で、数人いる孫の中でも卓馬に継いでほしがっている。
 当の卓馬は、バーだけをやりたがっているのだが、継がなければいけなくなるのは時間の問題だろう。

「どこのホテル?」

「新規オープンする北海道……もうすでに、嫌な予感しかしない」

「それだけ期待されてるってことでしょ?」

「はぁー、行きたくない」

 隣に立ってネクタイを選んでやると、高い身長を屈めて雪乃肩に顎を乗せてくる。滅多にないことだが、本気で行きたくないらしい。

「はいはい、今の季節ならこれでしょ」

 手渡したのは、青から紺色へと綺麗なグラデーションが印象的な一本だ。かなりじっくり見ないと分からないが、同じ色合いで雪の結晶が刺繍されている雪国をイメージしてある。
 何となくで雪乃が選んだもの。普段はネクタイとは縁遠い職業だが、年々呼び出される回数が増えてきた時に、イベントの度にプレゼントしてきた。

「悪いな」

「そうでもしないと、わざと印象が悪くなるものつけてくでしょ?」

「……いや、そんなことは」

 肩から離れた卓馬は、目を泳がせている。
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