記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「私の食生活への心配は必要ないわ。今はお弁当屋さん、飲食店、コンビニがいっぱいあんだから」
「そう言って、めんどくさがって買いにも、食べにも行かないだろ?」
今度は雪乃が目を泳がせる番だった。
こうして、いつだってお互い面倒を見てきたのだ。
「だから、頼むぞ……朔。雪乃が大切なら、体を粗末にさせないよな?」
話を振られた朔は、訝しげな眼差しを卓馬に向けた。
「いいのか? 本当はヒナに近づかせたくないんじゃないのか?」
「オレは言っただろ? 雪を傷つけないなら邪魔しないって」
雪乃の知らないうちに交わされていた会話に、不満の声を上げたくなる。
「雪……昔、胸にため込んだ不満をぶつけてみたらどうだ?」
「それでどうなるの? あれから何年経ってると? いまさら、どうでもいい」
「そう言わず、試してみろよ。これも何かの運命だと思って。ずっと、気にしてただろ? 朔のこと」
記憶の中にある彼と違っていて気付かなかったのは本当だが、卓馬の言うとおりだ。
忘れたフリをどんなにしようと、心のどこかで朔を気にしている自分はいた。
どんな人だって、忘れられるはずがない。