記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
ゆっくりと、ステーキを口に運びながら思い返していると、向かい側にいる朔と目が合った。
「ん? どうかした?」
「別になんでもない」
「嘘だね。そういう時のヒナは、本当は何か言いたいって思ってる」
かちゃりと、フォークとナイフが立てる音が嫌に大きく聞こえる。
胸の奥がひやりとして、喉が締め付けられた。
「知ったように言うのね。昔の私はそうだったかもしれないけど、今は変わったかもしれないわよ? 十年分の私のことを知らないくせに」
雪乃は吐き捨てるように言うと、朔が手を止めてこちらを見ていた気がしたけど、無視して食事に集中した。
立ち食いスタイルの食事は、あっという間に終わった。
元気な店員の声に見送られ外に出ると、すでにどこかで飲んできたのか上機嫌なサラリーマンとすれ違った。
鼻を掠めるアルコールとタバコの匂いに顔をしかめていると、後から出てきた朔が横に並んだ。
これほど近い距離にいても、彼からはタバコや香水の匂いがしないことに気づく。
「タバコ吸わないの?」
自然とそんな質問が口から出ていた。