記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「見合い? ヒナ……結婚相手を探してるの?」
「えっと……」
探してなんかいない。結婚願望なんてないし、伯母にセッティングされただけだ。
何より、あんたには関係ないでしょ。
言ってやりたい言葉はたくさんあるのに、喉の辺りでつかえて出てこない。
じりじりと間を詰められ、一歩下がっただけで車のドアに背中がぶつかった。
「ねえ、答えてよ」
不穏な光を目に浮かべながら、雪乃の顔の両側に手をついて逃げられないように退路を断たれた。
ドアにつかれた手から腕へ、腕から肩へと視線で辿っていくと、すぐ近くに朔の顔があった。身長差はあるが、体勢的に前屈みになるから仕方がないのかもしれないが、目の前に綺麗だという表現がピッタリの顔があると戸惑わずにいられない。
「ちょ、離れてよ」
「いいから、答えてよ……ヒナ」
迫力のある顔に迫られ、雪乃は焦ったように口を開いた。
「考えていません。考えていません……結婚なんて!」
一息に言うと、朔はほっと息を吐いた。あまりの近さに、吐息が前髪を揺らした。