記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
しどろもどろになりながらも説明すると、彼は表情を和らげて手にしたお札を雪乃の手に握らせた。
「そう……ならいいけど、ここに長期滞在中だからお金はいらない。それより……俺のこと分からない?」
ずいっと顔を近づけられて、雪乃は一歩後ろに下がった。
少し長めの黒髪に、珍しい灰色の瞳と見ていくと、スッと通った鼻筋が目に入り女性と比べたら薄めの唇に行き着く。
もっと下に視線を向ければ、綺麗な鎖骨と厚い胸板、割れた腹筋が待ち受けている。
「前に会ったことありました?」
本気の質問だった。
彼のような芸能人レベルのイケメンと会っていれば、嫌でも記憶に残るはずだ。
「あの……ご、ごめんなさい。私たちは初対面だと思いますっ!」
「ちょっ!」
余りにも堪えられなくなって、雪乃は出口へと走った。