記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「和人って誰?」
険しい顔で吐き捨てるように言った朔は、ウインカーを出すと細い道へと入っていく。
彼の放つ雰囲気が気になるものの、雪乃の興味は車の入っていった道に注がれていた。
「あれっ! ここって」
車は思った通りの場所へと入っていく。
「昼食って、ここで食べるの?」
「そうだよ。ヒナ、好きでしょ?」
朔が連れて来てくれたのは、ハーブショップ〈アロマティカ〉だった。
このハーブショップは、ハーブティーやオイル、ポプリを売る工房と、種類豊富なハーブ園がある。
なにより有名なのは、自家製ハーブを使った料理を出すレストラン〈スイートフェンネル〉と、そのシェフがクールなイケメンだということだ。
雑誌にも取り上げられていて、味も確かな店である。
駐車場に車が停まると、さっさと降りた雪乃は大きく深呼吸をした。
「はー、やっぱりここは良いわ」
土と花、木々に囲まれたこの場所は、都会でありながらまるで自然豊かな避暑地に来たような気分にさせてくれる。
レストランの方からは焼きたてのパンの香りが漂って来るし、ハーブガーデンからは摘まれたばかりのバジルの匂いがしてきた。どちらも食欲を刺激する匂いだ。
「雪乃ちゃん?」
躊躇いがちに声をかけられ、その方向に顔を向ければ一人の長身の女性が立っていた。