記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
全員がそろってそちらの方向を向くと、背の高い一人の男が立っていた。
少し長めの黒髪を後ろで結び、誰がどう見てもシェフだと分かる服に身を包んでいる。
「あっ! 西條さん」
「よお、アサヒ。今日の予約客ってお前か?」
レストラン〈スイートフェンネル〉のシェフである西條隼人もまた、秋葉と同じように雪乃と親しくしてくれている人の一人だ。
定休日ではない時に隼人と喋っていると、彼のファンである女性達に突き刺さるような視線を向けられるため、大抵は閉店後に秋葉の工房で一緒にお茶する程度のものだが、時には秘密のコテージに寄ってくれたりする。
もちろん、その時は秋葉も一緒だ。
隼人は卓馬とも親しく、時々卓馬のホテルの食事の相談にのったりしている。
彼もまた、朔と同じように誰も呼ばない呼び名で呼ぶ。
「そうなの?」
朔が予約したのかと様子を伺った雪乃だったが、当の本人は隼人を見据えていてこちらを見ない。
「ああ、俺だよ。予約をしたのはね」
「へー、卓馬以外と来るなんて珍しいな。まあいい、ちょうど開けるところだったんだ」
朔に値踏みするような視線を向けた隼人は、レストランの看板を「OPEN」に変えに行った。