記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「大丈夫か、アサヒ」
はっとして顔を上げると、隼人が心配そうな顔で覗き込んでくる。
痛いほどの視線に正面をちらりと見ると、ぎゅっと眉間にシワを寄せて窓へと顔を背ける朔の姿が目に入った。
「なんでもないです。今回のメニューは何かなって考えていただけです」
「そうか……それならいいけどよ」
少なからず納得がいっていない様子ながらも、隼人は次の料理を運ぶためにテーブルを離れて行った。
雪乃は木製のカトラリーケースから二人分のフォークを出して彼に一つを差し出した。
「ほら……いつまでも拗ねてるつもり? そんな態度でいられると、せっかくの食事がまずくなるんだけど」
隼人が作る大好きな料理を、嫌な気分で食べたくない。
そう口にすると、朔は弾かれたように窓から視線を離し、雪乃に顔を向けるとばつが悪そうな顔でフォークを受け取った。
「ごめん。そんなつもりじゃないんだ」
小さく零された謝罪を素直に受け入れ、雪乃はサラダを口に運ぶ。
レタスもベビーリーフもシャキッとしていてみずみずしい。
どちらも隼人自身が水耕栽培で育てているもので、この後出てくるケーキの飾りに使われているポリジもハーブガーデンで育てられたものだ。
ぱくぱくと口に運んでいると、居心地が悪くなるほど視線を感じて顔を上げた。
「ねえ、食べにくいんだけど。言いたいことがあるなら言ったら」
どうしてこう可愛いげのない言い方しかできないのだろうかと、いつも思うがどうにも治らない。もちろん、赤の他人相手にはここまでではないが、相手にはきつく聞こえるらしく、昔からあまり好かれたことはなかった。
「ああ、ごめん。いや……珍しいなと思って」
「珍しい?」
朔が気にしていないことにほっとしつつ首を傾げると、彼はスマートフォンを掲げてみせた。