記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!



「ねえ、この間のフレンチといい、さっきのインスタ映えの話といい。誰と比べてるの? これまで付き合った人?」

 そう口にしてみて、朔が他の女性と一緒にいるという考え方に、胸の辺りがチクリッと痛んだ。
 朔に嫉妬しているのかと笑ったが、雪乃も嫉妬しているのかもしれない。

「別に誰かと比べた訳じゃないよ。知り合いに聞いただけ……でも、だからといってこれまで誰とも付き合ったことがない訳じゃない」

「へ……へぇ、そうなんだ」

 このビジュアルなのだから、女性経験がゼロだとは思っていなかったが、本人の口から聞くと少しショックのようなものを感じた。

「俺はヒナには嘘も隠し事もしないよ」

「人間……経験が大事だもんね」

「じゃあ、ヒナも経験済みってことだよね? あんなにエッチな小説を書いてるんだから」

 ギクリとした。
 たしかに雪乃の小説には、細かなセックスシーンがある。
 周りからは、経験豊富だと思われがちだが、本当の雪乃はーーヴァージンだ。

 知識は本や映画から得て、想像から作りあげたもの。
 逆に本当の体験を知らない分、甘くてよりエロティックに書ける。
 けれど、それをわざわざ白状する気はない。



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